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徳島地方裁判所 昭和23年(行)14号 判決 1949年3月10日

主文

原告の被告長生村農地委員会に対する請求は之を棄却する。

訴訟費用中被告長生村農地委員会に関する部分は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告長生村農地委員会が那賀郡長生村大字明谷字堂谷百九番地の一山林弐反九畝二十一歩につきなした買収計画は之を取消す。訴訟費用中同被告に関する部分は同被告の負担とする。」との判決を求め、其の請求原因として被告委員会が原告所有に係る請求の趣旨記載の土地につき未墾地として買収計画を立てたが原告は以下述べる違法があるので之に異議申立をなしたところ之が却下決定あり更に徳島県農地委員会に訴願したが之亦棄却の裁決があり、已むなく本訴請求に及んだものである。即ち(イ)本件買収計画は自作農創設のため必要がないに拘らず買収計画を立てた(ロ)本件土地は自作農創設特別措置法第五条第五号により買収してはならないに拘らず敢て買収計画を立てた。蓋し原告は本件土地の上部一帯に相当広大な石灰石山を所有しており、之より採掘した石灰石を本件土地の近くに建設せんとする製造工場(白艶華、炭酸カルシューム及肥料用石灰石製造工場)に運び、以つて其の事業を営まんとするものであるが、右運搬の最も経済的な方法としては本件山林に沿ひ流下する河川に添ひ本件山林上に索道又はその他適当な運搬方法を講じて最短距離にある明谷部落の道路に搬出するの外なく、又右経営の必須条件としては本件土地上に同工場の土砂、余剰残物の置場所として使用せなければならず、本件山林を買収されるに於ては、運搬費用の多額により製品の高価を来し経営相立たず、亦前記原料山の資源開発の由なきに至るもので、本件土地使用の目的を変更することを相当とするものであるからである。(ハ)本件買収計画には買収の時期並対価を定めなければならないのに拘らず之を定めていない。

以上の如き違法があるものであると陳述した。

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め答弁として、原告主張事実中被告委員会がその主張の如く買収計画を立てたこと、原告より異議申立あり之が却下に対し訴願をなしたがその棄却の裁決のあつたことは認める。其の余の点はすべて之を争う。と述べた。

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